インドネシア発
フローレス島の椰子の葉を母が編む
「ドゥアニャム」二十代の女性メンバーが運営する
成長株のソーシャルビジネス

日本マーケットを支える大学院生の挑戦

今回登場するのは、インドネシアでもっとも成長し成功しているソーシャルビジネスの一つ、Du’Anyam(ドゥアニャム)を国内からリモート・インターンとして支援する早稲田大学院院生の乗上美沙さん。
このソーシャルビジネスの特徴は、立ち上げのスタッフが、高校時代の同級生で、高度な教育を受けたインドネシア出身の聡明で美しい若い女性だということ。日本からリモートインターンをする乗上さんも将来は、国際社会で羽ばたく準備をしている早稲田大学院生。小学4年から中国のインターナショナルスクールに留学していた、英語、中国語、日本語3カ国語のトリリンガルです。将来国際人権法の分野で活躍することを目標に日々勉強に勤しんでいます。
インドネシアのドゥアニャムと乗上さんの出会いは昨年の2月。女性差別撤廃や途上国問題の解決をテーマに掲げて勉強している乗上さんは、日本財団が主催するインドネシアでのプログラムに参加し、ドゥアニャムと出会いました。インドネシアのなかでも、ドゥアニャムはもっとも成功しているソーシャルビジネスの一つです。高品質が求められるマーケットに挑戦したいこともあり、2017年より乗上さんをリモートインターンとして迎え、日本展開を始めました。
数年前に大学を卒業したドゥアニャムスタートメンバーは、そうすることが、教育を受けてきた者の当然のふるまいであるように、インドネシアの女性が経済的に自立するためのプロジェクトを立ち上げました。創始者の一人が、インドネシア農村地域でも特に貧困率が高い東ヌサトゥンガラ州・フローレス出身ということもあり、現地の伝統工芸である、パルミラヤシの葉を用いた編み物を商品化することを目指し、フローレスの女性たちによる製品作りを始めました。
それまでのフローレス島の女性は、農業が中心だったため定期的に現金収入を得る機会がない状況がありました。ドゥアニャムは、地域の伝統文化を活かしながら、妊婦を含む女性コミュニティによるカゴやスリッパなどの生活雑貨・ファッション雑貨の定期的な製作を可能とする仕組みを作り上げました。

2014年の立ち上げからの3年間で、インドネシア、オーストラリアなどのリゾートなどへの販売が好調なせいもあり、フローレス島の17のコミュニティ、380人の女性が編み手として活動することになり、女性たちの現金収入は40%向上しました。活動をともにするコミュニティや家族にお金が入ってくるようになると、最初は活動に反対していた男性たちも率先して椰子の葉の収穫を手伝ってくれるようになったそうです。
現地からのさらに品質を上げたプロダクトで、日本のマーケットにチャレンジしている乗上さんですが、最初は販売やマーケティング経験がゼロだったため、試行錯誤の連続だったそうです。当初は倉庫もなかったので、家の中が商品でいっぱいになってしまったこともあるといいます。
お店に足を運ぶことから始めた孤立奮闘のなか、クラウドファンディグで展示会を開催したり、ギフトショーに出展したり、航空会社の会員向け季刊紙で販売してもらったりと、着実に手応えを感じています。

優秀論文賞に選ばれた。
この1年間、卒論を進めながら、商品の日本展開にチャレンジしてきた乗上さん。そこまで彼女を突き動かす原動力はなんだったのでしょうか。「私たちは、冷房の効いた部屋いい部屋で勉強し、恵まれた環境を特別に感じることもなくすんなりと受け止めてきました。インドネシアで、今の私たちの生活は当たり前ではないと感じる、リアルな世界もあることを知りました。ドゥアニャムのメンバーは、恵まれた環境で教育を受けた者として、貧困問題を解決することが、社会に対する義務だと捉えています。とても自然にソーシャルビジネスにチャレンジする彼女たちにとても感動しています」と話してくれました。
この4月から大学院に進み、さらに国際法を学び、将来はマクロなシステムから国際人権問題を解決していきたいという乗上さん。「マクロな視点での国際法や人権保障のメカニズムを学ぶ上で、私がいまドゥアニャムでやっているリアルな現場の仕事はまったく遠いようでいて、実は勉強を進める活力の土台になってくれています。人権保障のメカニズムも机上の空論とならないような、物事を考えるときの物差しとなってくれています」。将来、彼女の見る世界は、より多くの母親達がいまよりもっと幸せになっているでしょう。
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